日々の暮らしも(2003年)


5月31日(土)冗長構成

 マウスが突如動かなくなる。いやマウスは自走するわけではないから厳密に言うとマウスを動かしてもポインタが動かなくなる。ちゅんとも言わなくなる。いやマウスはもともとちゅんとはいわない。マウスにも保証があったはず、と保証書を探るに、あった。保証期限が切れた途端に故障するの法則を覆す、保証期間ギリギリセーフ。セーフィング。さっそくアップルテレフォン。マウス動かないんです。「眠っているのでしょう。そっとしておいてあげてください」。はい。てなわけで、あっさり新品を送ってもらえることになった。バッテリのときと違い、故障品を返せとも言わない。デュアルマウスシステムだ。正系のマウスに障害が発生しても副系のマウスで処理続行。


5月29日(木)田園都市線考

 たまプラと青葉台とでは街の上がりが根本的に違う、というのが同居人の持論でありまして、ベルグの4月でケーキをいただきながらなるほどと納得するのでありました。確かにケーキはうまいか知らんがそれで住みたいかといわれるとどうなんだろう。オレは昼間おらんし、別に構わんといえば構わんのであるが、かなりありえないだろう。キャラクタが対応してないだろう。とかいって東急で、ビュルデサボンで買ったそのブラウスは何なのさ、とつっこんでみる。みかん色のTシャツ買っておくれよとねだってみたがこづかいで買えと、なんのためにこづかいやっとんじゃと。まぁそれは置いといて、平日の昼間、存在するのは圧倒的に有閑マダムである。集ってランチを食べるのである。完全にオレはいてはいけない人物であった。これが青葉台だと老夫婦だったり高校生だったりするので街としては安心感がある。あぁよかったいろんな人がいるよ。というかふつうである。二子玉川にあえて住みたいとは思わないが川のある暮らしにはあこがれる。あくがれる。


5月28日(水)新宿から渋谷まで

 定時退社日につき限りなく定時に近い退社時刻をもってばっくれたハムさん(ハム)とハリンさん(不連続面)はハチ公前で待ち合わせて晩ごはんなと。ていうか渋谷は年齢的に概念的に若者の街で、ほんとに怖い。なにが怖いって会話が怖い。「えー何科なの?」「わりと英文科」「ちょーたいへんじゃん」。なにがどないにたいへんなんじゃー!オレなんか毎日毎日鉄板だぞ!まぁそれはいいとして。ハにインタビュー。どうですか最近の傾向は、そして対策は。穴埋めに不安が残ります。そうですか。


5月25日(日)都民はいなかった

 いるかさんが東京に来ていたので会合。トヤマさん、トノさん、ハムさん及びハリンさん。愛知、栃木、埼玉、埼玉、神奈川。水道橋に集って、東京ドーム。公務員だらけの野球大会!ってのは嘘で、オヴァケ屋敷に入りました。怖かった。文京区役所に上り、展望を。遠くから改めて新宿はすげえと思う。ビル建ち過ぎ。曇ってるしあの辺だけ。他部署の話を聞けばどう贔屓目に見てもオレ部署がいちばんラクチンだし、あんまり鬱陶しいとか辞めてえとか言ってはいかんと思った。いるかさんを見送りに東京駅まで来たのだが、東京駅っていうと何か新規なことが始まる不安感だったりそれが終わる空ろだったり、何らかの屈託があるのでどうにも平常心では居られない場所である。それから今日は全員本名です。


5月23日(金)島田さんについて知っている二、三の事柄

 こっち来てから、何度目かの微妙会合。声かけといて、って言われたので何人かに声かけたのだが、来てくれたのは島田さんだけだった。しかも実はあまりよく知らない。己の動員能力のなさを再認識する。ほんとに微妙な会合だったので、しかもちょっと遅れてったので、どうしていいのかわからず、困っているところへさらに遅れた島田さんが現れて何とか助かった。ああいう微妙な思いはなるべく避けたいこの人生。21時にはばっくれる。島田さんは東京出身だと思っていたら三河安城の辺りで、人妻で(知らなかった)、同い年だった(知らなかった)。江戸川区に住んでいるので、逆方向のに乗って帰っていった。さようなら。


5月22日(木)辞めたいんですけど

 同じ係の彼があまりにも無口なので気を引こうと思って辞めたいんですけど(嘘ではない)って言ってみたらば途端饒舌に。三カ月ぐらいはがんばってみたらこんな仕事向いてる人なんていないし向いてると思ってる人に限って全然仕事ダメだし係長になんて言うの突っ込まれるよ詰められるよ一生あの係長じゃないんだからもう少し我慢したら(別に係長が嫌で辞めたいわけではないんですけど)何れにせよ不況だし辞めたっていいことなんか絶対ないよ精神的に病みそうとか田舎帰りたいとかそういうんなら突発的に休むとか一身上の都合とかいろいろ言えるだろうけど仕方ないだろうけどそれは僕にはわからないしね一般論としては辞めない方がいいよ誰にきいたってそういうふうに言うから希望調書二月だから今から言ってもどうなんだろうね7月の定期異動は微妙だよ。はぁ、そうですか。


5月19日(月)僕らを乗せた電車は

 引越してから初めての早番でいつもより一時間早い電車に乗って直面したのは、いつもより一時間早い電車はいつもよりもさらに人が乗っているという事実だった。隣が女の人とかだったら、誤解のないように強調しておくが全くもってそんな気なくても、犯罪のような心境になる。日常生活にはありえない状況がある。満員電車は日常ではない。通勤しないでも生きていけるようになりたい。出社しないとできないことなんて会議ぐらいのもんだから、いらない会議がどんどんなくなって、出社しなくてもいいようになるといい。どう考えても通勤しすぎである。人は電車に乗りすぎである。埼京線はさらにすごいというから間違っている。むしろ間違っているそれは。


5月17日(土)ランブータン

 妻は果物が好きで何かと買ってくるのであるが(そういえば、実家でとれた、と大量のキウイをもって来たことがあった。リンゴと一緒にしておくと早く熟れてよい、と言った。ビタミン不足に悩む独身男子だった私はたいへんにありがたくちょうだいし、そして彼女のことをキウイ女と名付けたのであった。若かったあの頃、何も怖くなかった。今も怖いものなどないが、怖いものなど決してないが、何かに脅えつつ生きている。何に脅えているのだろう。キウイ女よりも恐れるべきものがこの世にあるとでも?)、今日のおやつはランブータンだった(画像)。初めて食した。ライチのような食感で、ライチに似た甘さだった。端的に言うと好みであった。あまり見た目で、視覚情報だけで判断せずに、臆見に惑わされずに、食したい。いろいろなものを食したい。いつまでもそこにいるような顔をして、いつのまにかどこいきやがった、つまり逃げ足の速さで勝負できるようになりたい。


5月11日(日)水難/坂町

 洗濯機の排水がうまくいかず水漏れ。かなり以前から排水パイプに穴が開いていたようだ、電気屋さんいわく。ただ、これまでは排水パンがあったので全く気になりませんでした。合い鍵をつくってもらった金物屋さんで物干し竿を買って帰ったら長さが足りずに泣きながら取り換えて貰いに戻る。結構遠かったし自転車だし青葉台は坂町だし。泣きながら自転車こいでたら雨が降ってきてつまりは踏んだり蹴ったり。弱り目にたたり目。きらきらポールは重く自棄になって振り回せば道路標識にぶちあたり、完。
 坂町というのは物理的に坂の多いというのもあるのだが何というか坂っぽい町。駅前に巨大厶印やブックファーストがあって坂をだらだらといろんな店がたち並んで、新しい町らしく新しい雑貨屋やケーキ屋の一方で微妙な古本屋もあって、むしろそういうので決めたわけでありまして、あぁごめんなさい、人生そんな具合にしか回せません。「勝手に回せ/人生」。そんなタイトルの長編映画とか短編映画はどうかと思いながらきらきらポールを振り回せば電柱にぶちあたり、完。


5月10日(土)転居通知

 田園都市線へ転居すると同時に mandarin-orange.net へ転居する。夜逃げのようだね。夜逃げかも知れないね。なぜ転居するのかということを説明できない、というのは転居する本人にもわからないからだが、という点においては、このふたつの転居はたいへん似ているといえよう。転居せんがために転居しているといえよう。問題はどうやって転居通知を出そうかという点にあり、出さんでおくか。そうはまいらぬか。いざとなったらどこへだって逃げ出すさ。と変な楽観主義。


5月4日(日)石神井公園

 朝いつもどおり7時に起こされる。味噌汁の匂いがする。妻はゆで卵をむいている。サンドイッチだった。バスに乗って中村橋で電車に乗って石神井公園へ。石神井公園は池だった。親子連れや恋人連れやでにぎわっている。天気がいいからだろう。休みだからだろう。池にはボートが浮かび、水鳥が泳ぎ、亀が二匹、三匹、数え出すと増えて四匹、日なたぼっこでじっとしていた。カラスが上空でかぁとないた。かぁかぁとないた。虎視眈々と狙っていた。虎の芽をもつカラス。潜った水鳥は浮かんでこない。あるおじいさんはボートを漕ぐのが上手で、あれはきっと元ボート部なんだねと話し合った。いつもはわれるわれわれの意見が、この生涯で初めて一致をみた。ベンチに座ってサンドイッチを食べた。サンドイッチに座ってベンチを食べる大会があったらたぶんそれはイギリスの名門コースで開催されるだろう。サンドイッチを食べながら(つまりはベンチに座りながら)、この世界のどこかには池ではない石神井公園があって、そんなものは面白くも何ともないだろうと笑った。ほぼすべての条件を満たした犬町で、猫を見るような違和感だろう。僕が思うに中野区は猫町だ。練馬区は犬町だ。猫の好きな人が猫町の住民であるとは限らない。人の好きな猫が人町の住民であるとは限らないのと同じだ。西賀茂は犬町で松ヶ崎は猫町だった。本を読みながらそんなことを思い出したので、本の内容はちっとも頭に入らず、ただ活字だけが脳のしわへと刻まれていった。このような記憶とも呼べないようなひっかき傷は、お風呂のふたをしめるときに少しだけしみるのだろう。ていうかしみた。


5月3日(土)ここはどこなのか

 初夏をイメージした路線の住みたくなるような駅前でお茶を飲んだらケーキセットでスコーンまでついてきて幸せ。こういうのは何的で何情緒なのか。東京にはどうやって、何をもって生計を立てているのかわからない町がある。と思う。まだまだ疑いうると思う。


5月2日(金)そんなかんじで

 ゴールデンウイークの狭間につきひまひまで早くに退けたので、ハムさん(ハムスター)とハリンさん(ハリスター)は、一緒にごはん食べた。ハにインタビュー。どうですか。どうにもならんよ。
 新宿駅で定期券を払い戻して帰った。


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