ひどくありふれた

日曜日の出勤を出勤した。一応出勤なのであるが、さほど出勤でもない。所属長に「背広じゃなくてもいいですか」と聞いたら「背広じゃなくていいけど、ジーパンはダメ」と言われた。背広以外の服ってジーパンしか持ってないんですけど。あとはパジャマぐらいなんですけど。

仕方ないのでパジャマで出勤した。パジャマに合わせる靴と鞄がなくて困った。そもそもパジャマは外出に向いていない。それでも健康サンダルが意外に似合った。何も持たないのが無難そうだった。あまり関係のない話で恐縮だが、靴と鞄はどっちがくつでどっちがかばんなのかよくわからない。わかる人いますか?

寒いので半コートを着込もうとしたらパジャマに半コートはおかしいと妻に止められた。なるほど確かにそのとおりなのでカーディガンを羽織った。散歩に出かける入院患者を偽装することができそうだ。

地下鉄に乗ると駅員やまわりの乗客がギョッとしたような顔をしたようなのだが、それは気のせいだった。誰もギョッとしていないのだった。私のパジャマ出勤が社会に与える影響など皆無なのだ。

職場で同僚に挨拶したら「似合ってるなぁハリン君、その髪形」ってそっちか。私のパジャマ出勤が会社に与える影響など皆無なのだ。所属長なら「パジャマはないだろう」ぐらいのことは言ってくれると思ったが、「おもしろいなぁ、君、その髪形」。もう髪形のことは言うな。

帰りはもうすぐなくなる近鉄の旭屋に寄った。何らかの文庫を買おうとして、財布を忘れたことに気がついた。そうだ、今日は手ぶらだったのだ。レジでちょっと恥ずかしい思いをしたが、「今日はこんな格好なので財布を持ってきていません」と正直に説明すると理解してもらえたようだ。理解されることにより自我の均衡を何とか保った。髪形のことに言及されると自我が倒れそうだったので、そうなる前に立ち去った。

結局ずっとパジャマで過ごした。自堕落な日曜日にはよくあることだが、自堕落を可能なかぎり回避したい私には珍しいことだった。つまり今日の自堕落は回避不可能だったのだよ。